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プロヴァンスの風に包まれるタオル<moussepuff>

2021.04.27

知る
プロヴァンスの風に包まれるタオル<moussepuff> プロヴァンスの風に包まれるタオル<moussepuff>

洗えば洗うほどふわふわになる特殊な糸を使った<moussepuff>に新色が登場。今回の新色は、プロヴァンス地方に吹く強風「ミストラル」をテーマに、プロヴァンス地方の土地の豊かさやそこに生きる人々の力強さを表現しました。今回はそんな<moussepuff>の世界観をより深く知っていただくべく、南フランス在住のエッセイスト・町田陽子さんに土地を育む母なる風「ミストラル」についてエッセイを寄稿いただきました!

町田陽子さん

エッセイスト

町田陽子さん

南仏プロヴァンスの町リル・シュル・ラ・ソルグで築120年以上の家を改装したシャンブルドット&セレクトショップ「ヴィラ・モンローズ」を営むかたわら執筆を行っている。著書に『ゆでたまごを作れなくても幸せなフランス人』(講談社)、『南フランスの休日プロヴァンスへ』(イカロス出版)

南仏プロヴァンスの町リル・シュル・ラ・ソルグで築120年以上の家を改装したシャンブルドット&セレクトショップ「ヴィラ・モンローズ」を営むかたわら執筆を行っている。著書に『ゆでたまごを作れなくても幸せなフランス人』(講談社)、『南フランスの休日プロヴァンスへ』(イカロス出版)

父なる太陽、母なる風

南仏プロヴァンスに暮らしていて、夏はうれしく、冬はつらいものはなんでしょう?

答えは、ミストラル。

ミストラルとは、アルプス山脈と中央山塊で生まれた風が、狭いローヌの谷を通り抜けることによって速度を増し、マルセイユあたりの地中海に吹きおろす冷たく乾いた北風。季節風ではなく、年中発生する風なので、40℃の熱い夏に吹いてくれれば気温が一気に下がりありがたく、冬に吹けば洋服を何枚重ねても寒さが骨身に染みる憎い風となる。

ミストラルは謎めいた風である。まず、昼にはびゅんびゅん吹き荒れるくせに、夜になるとぱたりと止む。次に、なぜか3日、6日、9日間と3の倍数日吹き続ける(奇数日という説もあるが、多くの地元人に聞き取りをした結果、3の倍数説が正しいよう)。そんなのただの言い伝えでしょと思うなかれ。生粋のプロヴァンス人なら必ず「いや、これは本当なんだよ」と大真面目に答えるはずだし、私自身、いつも癖で指折り数えて確認するが、たしかに3の倍数の日にちでピタリと止まる気がする。

その軽やかで覚えやすい音感からか、たぶん世界中に「ミストラル」という名前のレストランやカフェや美容院があると思われるが、そんなかわいいものじゃない。

マルセイユは古代ギリシア人が紀元前600年頃に築いた町だが、当時のギリシア詩人も「恐ろしい風」と記しているし、19世紀末には画家ゴッホが「ミストラルが吹き荒れてイーゼルが揺れて絵が描けない!」とアルルで嘆いている。アルルもマルセイユもプロヴァンスの中でもとくに激しく吹く場所なので、彼らの嘆きはもっともなことだと思う。

ミストラルが吹いたある11月のヴァントゥ山頂

さて、どのくらいの強風なのかといえば、過去最大風速は、1967年3月20日にヴァントゥ山(プロヴァンスの最高峰・標高1910mの山)で観測された313km/h(87m/s)。これは、日本の台風の過去最大瞬間風速(昭和41年・富士山)にあと4mで並ぶという数字。こんな恐ろしいミストラルにはお目にかかりたくないが、標準レベルのミストラルであっても、前に進めないという経験をマルセイユの海辺で何度もしたことがある。

写真は、ミストラルが吹いたある11月のヴァントゥ山頂。怖いもの見たさで上がってみたら、耳にはりつくような風の唸り声、9人乗りのミニバンでも車体がガタガタ揺れ、車のドアを開けた瞬間にはドアが吹き飛ばされるかと思うほどの想像を超える風力だった。身長185cmのガタイの良い男性でこのありさまなのだから、私のような女性など立っているのが精いっぱいで足が震えた。

ちなみに真夏でもミストラルが吹いたあとは海水温が一気に下がり、2〜3日海水浴ができない。そのくらい冷却パワーもある。

瓦を吹き飛ばしてしまう程の強風

身体を冷やし、肌を乾燥させ、瓦を吹き飛ばし、飛行機や船を運休させるなど、このプロヴァンス名物の烈風にはネガティヴなイメージがあるが、じつは悪いことばかりではないと土地の人は知っている。

土地を乾燥させるので、美しいラベンダーが育つ。それにかつては穀物のための風車にも役立ったし、カマルグ地方で作られる塩を結晶化させるのにも都合がいい。オリーブの受粉だってミストラルの仕事だ。

そして、ミストラルが吹くときは塵も吹き飛び、雲ひとつない澄みきった青空が広がる。想像してみてほしい。ブルーの絵の具を流し込んだような、真っ青な空を。

とくにフランスの冬というと朝なのか夕方なのかわからないようなどんよりした天気を思い浮かべる人が多いと思うが、ここ南フランスの空は冬だって夏だって青い。私はプロヴァンス以外の地方で暮らしたことがないが、一年中、きらめく青空の下で暮らしていられるのは本当にありがたいと思う。ちょっと嫌なことがあっても、ま、しょうがない、セ・ラ・ヴィという気分になるのだから。

フランスでもっとも美味しい野菜が採れるのは、ミストラルのおかげ

雨が降ると、お決まりのように雨雲を追い払うミストラルがやってくる。そのおかげで果物や野菜についた雨粒が吹き飛ばされ、南仏の強い太陽が果実を乾かしてくれる。だから、プロヴァンスではオーガニック野菜やワインが他の地域に比べて早い段階から成功したのだという。フランスでもっとも野菜がおいしいといわれる地方だが、それはミストラルのおかげといっていい。

ミストラルは、明るい太陽と青空のイメージ。素朴で大らかで明るいプロヴァンス人そのものともいえる。そう、ラベンダーやオリーブ同様、彼らを育んできたのも、太陽と青空とミストラルなのだ。

もし南仏を訪れたときにミストラルに当たったら、たとえ写真に写った自分の姿がどれも逆立った髪だったとしても、それは幸運なことだ。この地を作った父なる太陽と母なる風に出会えるのだから。

 

こちらの記事でご紹介したタオルはこちら!

プロヴァンスの風に包まれるタオル<moussepuff>

「ミストラル」が連れてくる青い空やラベンダー畑、色とりどりの野菜、そしてプロヴァンスに暮らす人々などを表現した新色。見るだけで南仏の気分を味わえる一品です。洗うほどふんわり膨らむ「パフィールコットン」を使用し、一般的なタオルに比べて優れた吸水性を発揮。長く柔らかな肌触りでご使用いただけます。

Photo/Text|Yoko Machida

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