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秋にも油断禁物!蚊に刺されたときの応急処置にはアイスタオルが活躍!?

2020.09.23

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秋にも油断禁物!蚊に刺されたときの応急処置にはアイスタオルが活躍!?

あまり歓迎できない夏の風物詩といえば、蚊。暑さのピークは過ぎたものの、まだまだ油断はできません。

 

そこで今回は、自らの身体を実験台に蚊の研究を続ける白井良和先生にインタビュー。蚊の生態はもちろん、最近話題の“タオルを用いたかゆみ対策”の真偽、さらには蚊に刺されたときのかゆみと免疫の関係まで、思わず蚊に興味が湧いてしまうお話が満載です!

白井良和先生

「害虫防除技術研究所」所長、「有限会社モストップ」取締役

白井良和先生

京都大学農学部昆虫学研究室にて農業害虫の研究に従事。その後、殺虫剤メーカーにてゴキブリベイト剤の研究・開発に携わり、富山医薬大にて「蚊の吸血誘引に関する総合的研究」で医学博士号を取得。2001年に「害虫防除技術研究所」を設立し、2003年には特に蚊に注力した「有限会社モストップ」を設立。蚊などの害虫の虫よけ剤、捕獲器の効果確認実験を行い、メディアへの情報提供を行う。著書に『蚊のチェックポイント71』『蚊の対策がわかる 蚊の教科書』共著に『蚊のはなし』がある。

京都大学農学部昆虫学研究室にて農業害虫の研究に従事。その後、殺虫剤メーカーにてゴキブリベイト剤の研究・開発に携わり、富山医薬大にて「蚊の吸血誘引に関する総合的研究」で医学博士号を取得。2001年に「害虫防除技術研究所」を設立し、2003年には特に蚊に注力した「有限会社モストップ」を設立。蚊などの害虫の虫よけ剤、捕獲器の効果確認実験を行い、メディアへの情報提供を行う。著書に『蚊のチェックポイント71』『蚊の対策がわかる 蚊の教科書』共著に『蚊のはなし』がある。

免疫の神秘!高齢者は蚊に刺されてもかゆくない!?

 

――蚊に刺されたときのかゆみ。あのかゆみの原因は、いったい何なのでしょう?

 

皆さんもご存知のように、蚊が人や動物を刺すのは血液を吸うため。そこで蚊は血を吸う直前に、私たちの皮膚に唾液を注入しています。蚊の唾液には、吸った血液を固まらせないための物質が含まれているのです。でも、刺された私たちからすれば、それは異物。私たちの身体が持つ免疫システムが「何か異物が侵入してきたぞ!」と認識し、アレルギー反応を起こします。その反応こそが、蚊に刺されたことによるかゆみの正体です。

 

――あのかゆみはアレルギー反応、つまりは免疫反応の一種だったのですか!

 

赤ちゃんとお年寄りでは、蚊に刺されたときの反応が異なりますが、これも免疫と関係しています。刺されたときの反応には5つの段階があり、1段階目は蚊に初めて刺された赤ちゃんの「無反応」。腫れもかゆみも生じません。それが二度目、三度目となると、刺されてから1~2日後に症状が現れます。これを「遅延反応」といい、これが2段階目です。初めて刺されたときの経験から身体が学習し、「以前にも侵入してきた異物が入ってきたぞ!」と、蚊の唾液と戦うための抗体が作られますが、この免疫の働きが、腫れやかゆみとして現れるのです。

 

刺されてすぐに腫れてかゆみが生じることを「即時反応」といいます。3段階目は、幼児期から青年期に見られる「即時反応+遅延反応」。刺された直後に症状が現れ、いったんは治まったかと思うと、翌日以降にぶり返します。4段階目になると刺された直後に症状が現れ、ぶり返すことのない「即時反応」のみとなり、5段階目は高齢者に見られる「無反応」です。何度も蚊に刺されるうちに特殊な抗体が作られ、何の症状も現れなくなります。ちなみに私自身は現在、4段階目。蚊の研究のために率先して刺されているので、一般の方より早く、5段階目の無反応に至る気がしています(笑)。

 

免疫との関係で、赤ちゃんとお年寄りでは蚊に刺されたときの反応が異なる。

 

「猛暑は蚊に刺されにくい」のウソとホントウ

 

――先生は研究者の鏡ですね(笑)。では、蚊に刺されやすい体質についてはいかがでしょう?これにも年齢差があるような。

 

そうですね。蚊は熱や二酸化炭素、水分に誘引され、人や動物に近づきます。そのため、体温が高い人、活発で二酸化炭素を多く出している人、やや汗っかきや皮膚がみずみずしい人が刺されやすい傾向にあります。赤ちゃんや子どもは体温が高く、動きも活発。反対に高齢者は基礎体温が低く、皮膚も乾燥肌の人が多い傾向にありますよね。つまりは幼い子どもや若い人のほうが、蚊に刺されやすいのです。

 

ほかにも蚊は濃い色や暗い色を好むことから、そうした色の服を着ている人、日焼けをしている人も刺されやすい傾向にあります。また、太っている人や血液型がO型の人も刺されやすいという研究報告がありますが、いろいろな要因が折り重なった結果のため、因子を持つ人全員に当てはまることではありません。

 

――蚊に刺されやすい環境についても教えてください。「猛暑の夏は蚊に刺されにくい」という話を耳にしたことがありますが、本当なのでしょうか?

 

猛暑になると蚊の吸血意欲が減少するという側面も、たしかにあります。ただし、それ以上に言えるのが、暑さによって蚊の幼虫が育つ環境が減る、ということです。蚊の幼虫であるボウフラが孵化し、育つのは水のある場所。庭の水たまりもボウフラの生息場所ですが、あまりに猛暑の日が続くと、水が蒸発してしまいますよね。すると蚊として飛び立つ以前に死んでしまい、猛暑の夏には蚊の全体量が少なくなります。

 

その結果が「猛暑の夏は蚊に刺されにくい」という実感につながるわけですが、暑さの峠を越えた9月にも要注意です。蚊の活動期間は皆さんが想像する以上に長く、4月下旬から11月下旬くらいまで続きますが、特に9月には秋雨前線が発生します。この時期には水が蒸発するほどの猛暑にはなりにくいため、蚊が増えることが十分に考えられます。

 

間違うと逆効果!アイスタオルを用いた正しい対処法

 

――そこで伺いたいのが、蚊に刺されたときの対処法です。最近では「患部にホットタオルを当てるとかゆみが和らぐ」という方法が話題ですが、効果はあるのでしょうか?

 

そうした方法が取り沙汰されているようですが、学術的な根拠はなく、皮膚科医による専門書では、むしろ「あたためるとかゆみが増す」と指摘されています。お風呂に入るとかゆくなるのも同じ原理です。

「患部にホットタオルを当てるとかゆみが和らぐ」に医学的根拠はない。

同じ書物によれば、蚊刺されによるかゆみを和らげるには、反対に「患部を冷やす」ことが大切。冷たいという刺激がかゆみの神経活動を抑制させるため、アイスタオルの使用がおすすめです。ただし、あまりに冷たすぎては、かえってかゆみが増すという報告もあるため、流水や氷水で濡らしたタオルを軽く絞り、患部に当てるくらいが適当ではないでしょうか。

 

――ホットタオルではなく、その反対のアイスタオルですか。しかも流水程度の冷たさでOKとなると、外出先でも簡単に作ることができますね!

 

とはいえ、かゆみを抑える最善の方法は、かゆみ止めのお薬を塗ること。アイスタオルを使用するのは、まさに外出先での応急処置くらいに考えてください。ちなみにこの方法は、アブやブユ(地域によりブヨ、ブトとも言います)に刺されたときにも応用できます。そして、蚊に刺されるのを未然に防ぐには、極力、肌の露出を避けること。特に首回りは衣類で覆うのが難しい部分ですが、首にタオルを巻いておけば、防止策になりますよ。

 

蚊に刺されるのを未然に防ぐには、極力、肌の露出を避けること。

 

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